back number

「非連続的発見」が導く逆転のシナリオ
――「DDAIF(Drug Discovery AI Factory)イノベーションブリッジ」が日本の創薬「死の谷」を救う

FEB 13 2026
 2026年2月12日、日本の創薬力の復興を目指す画期的なプロジェクトが発表された。中外製薬の永山治名誉会長、FRONTEOの守本正宏代表取締役社長、豊柴博義CSOらが登壇し、AI技術を核とした新たな創薬エコシステムの構築について、並々ならぬ決意を語った。

■ 外資依存からの脱却:永山名誉会長が鳴らす警鐘

 「基礎研究のレベルは高い。しかし、それを薬にする力が弱い」。説明会の冒頭、中外製薬名誉会長の永山修氏は、日本の創薬を取り巻く厳しい現実に切り込んだ。

永山氏は、2025年の新薬承認における国内上位10社のうち、日本勢は中外製薬と武田薬品のみで、他はすべて外資系企業が占めるという惨状を指摘した。また、米国の17分の1規模に過ぎないバイオベンチャー数など、構造的な課題を危惧している。この停滞を打破するため、永山氏はFRONTEOのAI技術が日本独自の創薬エコシステムを完成させる「画期的な一手」になることへの強い期待を表明した。

■ AIによる「仮説生成」:守本社長が描く逆転の構想

 続いて登壇した守本社長は、これまでの「資金力のみに頼る創薬」の限界を指摘すると同時に、日本が持つ真の強みをデータで示した。

米国の研究開発投資額は日本の約200倍にのぼるが、1億ドルあたりの新薬創出数で見ると、日本は米国を大きく上回る効率を誇っている。つまり、日本には「限られた資金で成果を出す優れた技術力」が既に備わっているのである。

守本氏は、臨床試験が失敗に終わる主要因は「標的分子仮説の誤り」にあると説く。この問題を解決するのが、今回発表された「DDAIF(Drug Discovery AI Factory)イノベーションブリッジ」である。優れた技術を持ちながら資金不足で停滞する国内バイオベンチャーに対し、AIによる「仮説生成」と「資金・技術」の両面から支援を行い、死の谷を突破させる狙いだ。

■ 豊柴CSOの技術論:「方程式」が導く非連続的発見

 技術的中核について、豊柴博義CSOは、FRONTEOの優位性を「非連続的発見」という言葉に凝縮させた。生成AIなどが得意とする既存知見の延長線上にある「連続的発見」とは異なり、創薬のブレイクスルーには、従来の常識を超えた「非連続的発見」が不可欠であると断言する。

これを実現するのが、独自に開発された「豊柴方程式」である。この方程式は、科学的発見のプロセスそのものを数理化し、疾患と標的分子の関係を数百次元で最適化する。相関関係ではなく、因果関係を理解した高精度の推論を可能にするこの技術は、人知では到底及ばない2000万通りの潜在的仮説空間を自在に横断することを可能にした。

■ 「逆転のプラットフォーム」:日本発の新薬を世界へ届ける

 今回の発表では、エヌビィー健康研究所がわずか4ヶ月で29種類の疾患候補を選定した成果など、すでに具体的かつ劇的な成功事例が示された。

本プロジェクトは、単なる企業の提携に留まらない。永山会長が危惧する構造的課題、守本社長が指摘する日本の高い潜在効率、そして豊柴CSOの「方程式」が導く独自のAI技術を融合させ、日本を再び「創薬大国」へと押し上げるための逆転のプラットフォームである。

日本が持つ「効率の良さ」という武器をAIで極大化し、世界の創薬市場で再び主導権を握る。その挑戦がいま、確かな形となって始動した。