dec 09 2021
認知行動療法
実践的「認知症支援プログラム」を学ぶ
ルーテル学院大学 総合人間学部
教授 福島喜代子さま
今回のスペシャルゲスト、福島喜代子教授は、社会福祉に関わる、対人援助の専門職の方を育成する専門家。専門職の方々への指導に留まらず、一般の方々へも、「課題を抱える方々を支援するには、どのようにしたら良いのか。」といった問題に対し、大きな支援を行っていらっしゃいます。
「認知行動療法」という、精神療法が、多くの精神疾患に効果があるとして、広まってきています。福島先生の著書『事例で学ぶ認知症の人の家族支援-認知行動療法を取り入れた支援プログラムの展開-』(中央法規出版)では、認知症の方がどういった状態にあり、関わる家族がどういった思いになるのか。といった具体的な事例から、家族支援プログラムを体系的に学べる書籍となっています。
「ご家族も困るような行動を繰り返してしまう場合に、工夫の仕方がある。ということがわかってきています。その時に行動療法という考え方で、認知症の方がお困りになられる行動を繰り返してしまうことを、どうやってご家族が防いだり、和らげていくかという考え方を家族支援プログラムに盛り込んでいます。お困りのご家族の支援に役立てていただければ。」と話す、福島教授。
実際の家族支援プログラムを対面で受けられなくとも、科学的根拠に基づく、効果的なサポートを受けられる書籍となっています。認知症の方の介護に悩んでいらっしゃる方にはもちろん、認知症の方に対して、具体的なイメージをお持ちでない方にも、ぜひお読みいただきたい一冊です。
また、福島教授は「内閣府の調査にて、これまで生きてきた中で死にたいと考えたことがあると答えた人が5人に1人。そして10人に1人はこの一年間に真剣に死について考えたことがある。と一般の方が答えた」と、危機感を懸念されます。
そこで、日本で自殺者ができるだけ少なくなることを目標に、2007年4月に「自殺危機初期介入スキル研究会」を創設され、自殺のゲートキーパーの養成、「自殺の危機にある人々と直接接する機会の高い人々に、適切な初期介入スキルを身につけてもらうこと」を目的とし、ワークショップを開催されています。
自殺の危機にある人と接したとき、傾聴のみでは残念ながら自殺は予防できないとされています。また、「他人へつなげよう」と他機関を紹介するだけでも、自殺は予防できないそう。ワークショップは、自殺危機にある人への初期介入スキルを身につけることができる内容となっています。
これまでに16,000人の方が参加されていますが、専門家だけでなく、ボランティアの方や、ご家族の参加もあります。
福島先生の対人援助スキルを学ぶことによって、専門家ではない私たちも、大切な人を守ったり、少しでも寄り添うお手伝いができるのかもしれません。福島教授のインタビュー、ぜひお聴きください。
【書籍紹介】
事例で学ぶ認知症の人の家族支援
-認知行動療法を取り入れた支援プログラムの展開-
(発行:中央法規出版)
家族が悩んだり、つまずいているポイントは人それぞれ。その“それぞれ”を支える個別支援に取り組んでみませんか?本書は、家族に認知症ケアのコツを上手に伝えるためのプログラムと今すぐ使えるワークシートを収載。認知症介護に携わる対人援助職に読んでほしい1冊です。
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【スペシャルゲストプロフィール】
福島喜代子(ふくしま・きよこ)
ルーテル学院大学総合人間学部教授。大阪大学(学士)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院(社会福祉学修士)、日本社会事業大学大学院修了(博士:社会福祉学)。社会福祉士。留学前の最初の職場で、黎明期の高齢者の在宅福祉推進を担当し、全国の在宅福祉の現場を訪ね歩いた。対人援助職のトレーニングを専門とする