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Aug 08 2023

社会福祉法人春岡会 


顧問   本多満さま
副理事長 福崎学さま



ー Q. これまでのあゆみを教えてください。

A. グループ会社であるホンダロジコムという会社は物流とビルメンテナンス系の事業を柱としてやってまいりました。今から17年ほど前、ホンダロジコムグループの前社長である私の兄のところに、老人ホームを事業として行うという話が舞い込んできました。

最初は知識もなく大混乱でしたが、何としてもやらなければならないという話になり、立ち上げることとなりました。私も事務方としては苦労いたしました。ただ、ビルメンテナンスも物流も人がやる仕事という点では同じことなのです。私どもは、トヨタ方式の物流のスタイルを作ってきていたので、社会福祉法人の経営も基本的な土台は同じです。そこへ福祉、介護の要素を入れてやってまいりました。

当時の福祉事業は働き手の犠牲的な部分があり成り立っているところがありました。ただ、福祉だから給料は安くて残業代も払わなくていいという考え方はおかしい、変えたいと僕は思っていました。給料が正当にもらえて働けるというのが基本であるべきだと今でも思ってます。







ー Q. 春岡会さまのお取り組みや魅力についてお聞かせください。

A. 人材教育について、入職した職員が短期間で技術をマスターするためのマニュアル作成をしています。また、1度学んだことを短期間で身に付けられるよう、繰り返し覚える訓練道場のようなものを作っています。物流の世界で実はやってることなのですが、これは福祉、介護においても一緒なのです。ベテランだからできるのではなく、新人でも3ヶ月経ったら半分はできる。1年、2年経ったらもうベテランになれるという職場環境を作ってくことを基本として考えております。

実は、父が会社を運営している時代からずっと「福祉」ということについての考え方の素地があったのです。この根底にあるものが今も職員にも伝わっているのかもしれません。  



ー Q. 入居者さまのお声やエピソードなど等をご開示いただける範囲内で教えていただけますか。

A. 入居施設の特徴のひとつとしてユニットケア運営を行っているということがあります。入居者さまはお一人お一人個室に入居され、これまでの生活に近い形でお過ごしいただけるようにしております。コロナ前まではご家族とお食事に行かれたり、外出をするということができたのですがコロナで叶わなくなってしまいました。そんな中、ある入居者さまの息子さまが結婚式を挙げられることになりました。コロナ禍において外出が叶わないため、入居者さまは、やむを得ず結婚式の模様をオンラインでご覧になられました。ところが、ご家族、職員の取り計らいにより、結婚式が終わった後、息子さん夫婦に衣装のまま施設に来ていただき、一緒に写真撮影をすることまで叶ったのです。入居者さまは大変驚かれていらっしゃいましたが、大変お喜びになられていました。

また、私共の施設の特徴の一つとして看取りということをやっております。職員のひとりがある入居者さまに対して、もうそろそろ最期が近い状況にあるのではと感じ取りました。ご本人さまに、「最期に何かしたいことはありますか」とご質問をしたところ、お墓参りをしたいというお答えがありました。すぐにご家族の方と相談をしてご自宅に外出する手はずを整えました。無事外出され、ご自宅の仏壇で手を合わせることができました。このご入居者さまは、施設に戻ってこられた3日後に穏やかに逝去されました。後日ご家族の方からは大変な感謝のお言葉を頂戴いたしました。



ー Q. お食事は楽しみのひとつだと思います。お食事の特徴についてお教えいただけますでしょうか。

A. 栄養のバランスを考えた、また入居者さまの状態によって、ソフト食、ミキサー流動食といった、状態に合わせたお食事の提供をしております。

実は今年度から、出張ランチということを実施しております。月1回のイベントとして、外食ケータリングという形で、美味しいものを食べていただきたいという思いで提供しています。先日の出張ランチは和食というカテゴリーで、特に好評だったのがお寿司です。調理師が施設でお寿司を握って提供したことが非常に喜んでいただけました。

またもう1点取り組んでいることがございます。愛知県、特に一宮市には、喫茶店のモーニングという文化があります。例えばコーヒー1杯でパンがついてきたり、バナナがついてきたり、場所によってはお蕎麦がついてくるというようなお得感がいっぱいの文化があるのですが、そのモーニングを毎週金曜日に実施しております。パンを様々な種類から選べるような形でコーヒーとともに提供しています。かつて喫茶店に行ってモーニングをいただいていたことを再現しようという想いで行っています。こちらもすごく喜ばれておりまして、入居者の方も毎週金曜日を楽しみにされてます。



ー Q. フィリピン人の職員の方が、介護福祉士の資格を取得されたと拝見いたしました。法人さまとしてのお取り組みついて、お教えいただけますでしょうか。

A. 3年ほど前から外国人のスタッフを採用し始めました。ある時、フィリピン人の職員より、介護士の資格を取りたいという申し入れがありました。そこで、週に2時間ずつ勉強する時間を設けたのですが、教える職員の方が音を上げてしまったということがありました。専門用語での日本語での試験ということに難しさがあると思うのですが、例えば「 床ずれ」という言葉、これは試験問題だと「褥瘡」となります。こうした言葉を覚えながら試験勉強を教えることに現場からは問題が上がってきました。そこで、タガログ語と英語ができる日本語の先生を集め勉強を教えてもらうことにしました。すでに実績が出たのですが、昨年1人、今年3人が介護福祉士の国家試験に合格しました。本人にとっても、施設にとっても、お給料、補助金、また介護レベル向上といった面において、お互いに良いことばかりです。

これは私の夢なのですが、例えばフィリピンに施設を作って、当法人で資格をとった方々をマネージャーとして派遣し、働いてもらう。そこで教育をしてもらう。こんなことができればなと思っております。

もう一つ考えていることがあって、資格をとった方々が永住権を取ることができれば、日本に家族を呼ぶことができるんですね。家族が来た時には、家族が働く場所が必要ですよね。今考えてるのはビルメンテナンス、物流の会社でも外国人労働者に働いてもらうということ。雇用をするということは、その家族も含めて雇用するということになる訳です。人を大事にするグループ会社ですので、老人ホームで 働いている方の家族が、我々のグループの他の分野でも働いてもらいたい。そうすることでまたグループに人材が来るのではないでしょうか。

今は目先のお金はかかりますが、5年先、もっと先を見たら、日本人と同じ資格を取って日本で永住できる資格を取っていただき働いてもらうということは、日本の国のためにもなる訳です。これは当法人だけのものではなく、お助けをこの愛知県から、我々も担えればと思っています。

日本人の若者が減少していくのは確実ですから、日本に来た外国人に日本人と同じような 待遇で、家族も来て働いてもらって、日本文化なども理解してもらって、逆にその方の国の文化も理解してもらって生活していくというのがこれから日本が取る方向なのではないでしょうか。

アメリカでもヨーロッパでも複数の民族の人が生活しているんですよね。日本だけが例外的に日本人だけでやろうとしてる。いろんな国の文化の人が仲良く生活するということが日本の中で起きればいい。と思っています。

私は、大学生の時にカナダに1年間留学、社会人になり木材会社に勤め、ボルネオ島に4年半生活していました。海外生活を長くしていましたので、国は日本だけじゃない、世界で様々な人がいるのだから、仲良く生活しなければいけないと思っています。



ー Q. 今後のご展望についてお聞かせいただけますか。

A. 機械、ロボットでできることはもっとシフトしていきたいと考えています。介護者が入居者と向き合える環境を、これからもっと作っていきたいと思っています。 スタッフにゆとりができるように、楽ができるようにということも。このような対策を打てるというのもグループ会社の強みと言いますか、お互いに良い効果があるんですね。お互いに良い方向へ行くこと。福祉だから、施してあげる。そういう考えではなく、福祉も同じ一つのビジネス。仕事の中身が違うだけで、働き手からすると、どの仕事も一緒だという考えです。





【施設紹介】
法人名:社会福祉法人春岡会
所在地:〒491-0824 愛知県一宮市丹陽町九日市場字新猫塚85番地