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MAY 22 2026

福祉だからこそ経営が不可欠
人の成長を見守り続けて70年


社会福祉法人北海道光生舎

社会福祉法人北海道光生舎 理事長
髙江 智和理さま




ー Q. 沿革を教えてください。

A. 赤平市を中心に歌志内、札幌などに26の障害者支援施設や高齢者施設などを運営する社会福祉法人です。父である髙江常男が、1956年に赤平市で創業しました。父は、小学生のときに竹とんぼがあたって右目を失明、17歳のときには高圧電線で感電し、両腕を失った障がい者です。1日3時間睡眠で口で字を書く練習をし、不屈の精神と努力により地元の新聞社で記者職にありつきましたが、そこで炭鉱事故で障がいを負ったたくさんの人たちと出会ったことから、赤平身体障害者福祉協会を発足することになります。これが当法人の前身となります。炭鉱が閉山していくなかで障がい者の働き口はどこにもなかったため、自ら仕事を作るしかないと考えたわけです。

仕事に選んだのは、大量生産方式かつ分業方式が可能なクリーニング業です。これならば障がいがあっても適材適所で仕事を割り当てられ、健常者と変わらず生産性が得られると見込んだのです。お金も技術も信用もありませんでしたが、「断られたら命を絶つ」覚悟で銀行の役員面接に臨んで融資を勝ち取り、経営者としての人生がはじまりました。

しかし、利用者の生活支援と工場経営の両立は生半可なものではなく、夫婦ともども寝る間も惜しんで働き、自分たちは10年間給料をもらっていませんでした。その後、北海道からの指導で営業部門は株式会社として独立することになり、結果的に現在は社会福祉法人が事業収益70億円、株式会社は売上高40億円を超えるまで成長することができました。



ー Q. 法人理念に掲げている「企業授産」について教えてください。

A. この言葉は父の造語なのですが、〝福祉こそ経営が大切である〟との信念にもとづき、授産施設であっても資本や組織、新規開拓、損益計算書といった一般企業と同様の要素を重視することで自立していくという考え方です。

たとえば当社は創業時から一貫して複式簿記の企業会計方式を採用しています。社会福祉の会計はもともと単式簿記でしたが、複式簿記を使用することにより減価償却を行うことができ、資金を設備投資にまわすことができます。機械化することで生産性を上げ、利用者の作業工賃を上げることが可能になります。スチームを使用しないヨーロッパ製の最新クリーニング設備を導入できているのも、そのためです。

同時に、自立を支援するためには生活環境の整備も不可欠です。利用者の状況やニーズに応じて特別養護老人ホームやグループホーム、デイサービスなどを整備し、生涯にわたってサポートできる体制も整えてきました。



社会福祉法人北海道光生舎



ー Q. 創業者から会社を引き継ぐときの心構えはいかがでしたか。

A. 父が脳梗塞で倒れたことで、心の準備もないまま25年ほど前に理事長の座を引き継ぐことになりました。それまでは、カリスマともいえる父の判断にまかせていれば会社は継続してこられたわけで、その経営能力や人間力たるや到底及ぶわけもありませんでした。不安でしばらく眠れない日が続いたのですが、ある日ふと、父が死を覚悟して乗り切った創業時のことを思い出し、自分自身も同じ思いでやればいいのだと腹をくくりました。

そのためには、自分一人の力ではなく社員が同じベクトルで一丸となる必要があると考え、まず取り組んだのは幹部社員との毎朝7時からの勉強会です。情報共有や各々の考えをすり合わせ、意思統一を図る場として実施するようにしました。今も形を変えながら続けています。

次に取りかかったのが人材教育です。やはりこれが最も大切であり、時間がかかるものと位置づけ、研修体制の充実や職場環境の改善に取り組みました。社員のみならず利用者においても、いかにできることを見つけて根気よく見守ることができるかが大切です。言語と聴覚、知的に障がいがあって会話もままならないような利用者であっても、5年も経てば後輩に指導ができるくらいまで成長することもあります。



ー Q. 今の福祉における課題をどうとらえ、どう対策を講じていますか。

A. 拠点とする赤平市は、人口8000人程度の小さなまちですから、当然、人手不足は深刻です。そんななか当法人においても積極的にDX化は図っており、見守りシステムの導入をはじめ、バイタルチェックや個別支援計画の作成等において生成AIの導入をすすめています。外国人人材も活躍してくれていますが、都市部と比べると不利な面も多いため、キャリアパスや教育などの充実を図って施設自体の魅力を高めていなくてはなりません。  

あとは、今後はますます地域連携が必要になってくると感じています。たとえば当法人では、施設長が辞めて困っていた空知管内の障害者施設に、人材を派遣したことがあります。当初は2年間の約束でしたが、優秀な人材と認められ、そのままそちらに転職することになりました。当法人でキャリアを積んだ人材が、場所を変えてもこの業界で活躍し続けてくれるのは誇らしいです。単独の施設で人材を育成するのは、なかなか骨の折れることですから、そんなときこそ複数の事業所を有し、ある程度規模の大きい当法人のようなところが力を貸し、協業するといった取り組みが、地域の社会資源を維持するためには必要だと考えています。  

今後もさまざまな法人と協力しながら、地域の福祉を守っていきたいですね。  



ー Q. ありがとうございました。



社会福祉法人北海道光生舎



【学会紹介】
法人名:社会福祉法人北海道光生舎
所在地:〒079-1135 北海道赤平市錦町2-6