Isobe Shigefumi

nov 11 2021

「介護」を発明
なんにもないから知恵が出る


フットマーク株式会社
取締役会長 磯部成文さま

誰もが当たり前に使っている言葉「介護」。実は、ある経営者によって生み出されたものであることを、恥ずかしながら私は、最近知りました。現場から聞こえる声なき声を拾い、コンセプトに止まらず具体的な言葉を生み出し、大きな市場創造につなげた人物こそ、今回のスペシャルゲスト、フットマーク株式会社 取締役会長 磯部成文さん。

フットマーク社といえば、私たちの世代は、誰もが同じ青色の水泳バッグを肩から下げ、水泳帽子・水着を着てプールを楽しんでいたことを思い出すかもしれません。同社は、日本国内の水泳帽のシェアで約5割を持つトップメーカーであり、学校用水着(スクール水着)でも最大手です。



「うちのおじいちゃんがおもらしするようになって」

顔見知りの近所のお嫁さんが、磯部会長のお母さまを訪ねた際、恥ずかしそうに語ったことがあったそう。すぐに、試作品として大きな大人用のおむつカバーを持っていったらたいそう喜んでくださったそうです。すでに赤ちゃん用のおむつカバーを作っていたフットマーク社にとって、身内の恥ずかしいことでも相談しやすかったのかもしれません。

ただ、その時、磯部会長は「御近所におもらしのおじいちゃんがいるということは、実は全国あちこちにいるんじゃないかと思った」と話します。実際その後の大人用おむつ市場の拡大を知っている身としてはさすが、と感じるところですが、当初はなかなか売れなかったよう。大人用、病人用、医療用など、名前もなかなか定まらなかったとか。



病院の看護師のやさしいイメージのある「看護」と、けが人を助ける「介助」を組み合わせて「介護」という言葉が生み出されるまでには、やはりドラマがありました。

さらに驚くべきは商標登録をした一方で、使用したいという依頼には「どうぞご自由にお使いください」というスタンスだったということ。もし、商品登録に伴う使用料を徴収していたら...と私のような小市民はすぐに考えてしまいますが...

文化を生み出し、市場を創造してきた磯部会長には、さらにこれからの未来についてもお話を伺いました。今なお、企画を考え、最前線で経営に携わる磯部会長へのインタビュー、ぜひお聴きください。





【書籍紹介】
書籍:なんにもないから知恵が出る:驚異の下町企業フットマーク社の挑戦
(発行:新潮社)



  • 業界が斜陽? 会社が小さい?
    それがどうした。やれることはたくさんある!

    もともとおむつカバーを作っていた会社が、「おむつからオツムへ」と発想を転換し学童用水泳帽の市場を創造。さらに「介護」という言葉を発明して関連市場も創り出した。近年では「水中運動用水着」を提案し、プールを「泳ぐ場所」から「運動する場所」に変えている。なぜ東京・墨田区にある従業員60人あまりの中小企業が、こうした「市場丸ごとの創造」を繰り返せるのか。その秘密を同社トップと気鋭の経営学者の対話で解き明かす。

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【スペシャルゲストプロフィール】
磯部 成文(いそべ・しげふみ)

1941年生まれ。フットマーク株式会社代表取締役会長。慶應義塾大学経済学部卒業後、大阪・船場で3年間の丁稚奉公を経験。1967年に磯部商店(現フットマーク)に入社し、1970年に代表取締役社長に。学童用水泳帽の市場を創造し、「介護」という言葉も発明した希代の商品企画マンとして知られる。