Shibahara Keiichi

jan 19 2022

"医療難民"を救う
地域医療を変えた「在宅型医療病床」とは


株式会社アンビスホールディングス
代表取締役 CEO 柴原慶一 さま

2025年、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3.3人に1人が65歳以上、5.6人に1人が75歳以上という、未だどの国も経験したことのない超高齢社会の「入り口」に立つことになる日本。さらにこのままいけば、2065年には、1.3人の現役世代が1人の高齢者を支える構図が誕生することに。

結果、介護費・医療費などの社会保障給付費は高齢化を背景に今後も増加を続け、2021年時点の130兆円から、2025年時点で150兆円、2040年には190兆円までへと肥大を続けると推計されているのです。

こうした事態に政府は「地域包括ケアシステム」※1の推進を図り、病院中心の医療から、高齢者の「住まい」を中心とした地域完結型医療への転換をはかり、医療費を削減していこうと考えています。実際、特別養護老人ホームや、サービス付き高齢者向け住宅など、高齢者向け施設の充足は図られてきています。

しかし、「これらの施設が受け止められない、医療依存度の高い高齢者、いわゆる"医療難民"の存在が深刻な課題として挙げられる」と警鐘を鳴らすのが、今回スペシャルゲストとしてお招きした、医師・医学博士であり、株式会社アンビスホールディングス代表取締役CEO 柴原慶一さん。



政府の施策が推進されると、今度は「症状は安定したため急性期の病床にいる必要はなくなったが、密な看護ケアは必要である」あるいは「これ以上、厳しい副作用と闘いながら受ける治療は望まないが安心できる療養生活を送りたい」という患者が増えることになります。国の医療・介護保険制度が想定する範囲に収まる、いわゆる「一般的な人たち」には、システム的なルートが用意されているのですが、「構想からこぼれ落ちてしまう患者」、つまり「医療難民」が存在していることが、深刻な社会課題となっているのです。

そこで、"医療難民"を救うべく、研究者から事業家へと転身し狼煙を上げたのが柴原さん。「病院でも介護施設でもない地域医療への処方箋」として「在宅型医療病床」を提供する「医心館」を立ち上げました。具体的な方法論として考案したのが、「医師機能をアウトソーシングした在宅型の"病床"」というアイデア。病院から医師機能をアウトソーシングして、精密検査や外来、救命救急といった諸機能を落とし、コスト負担を大幅に軽減します。これには、看護師のプロフェッショナル力が必要です。質の高い看護体制を整えることで、医師の常駐を必要としない仕組みが出来上がったのです。

「医心館」について
詳細はこちらから

「医心館」を展開するアンビスホールディングスは、「アンビシャス・ビジョン(大志ある未来像)」にちなんで名付けられました。同社は、柴原さんの地域社会へ貢献する想いが求心力となり、「世界で最もエキサイティングな医療・ヘルスケアカンパニーへ」を旗印に、急成長を遂げています。

また、研究者から事業家へと転身された経験から「研究者はもっと事業家になることを考えたみたら良いと思う。研究者の継続して研究する姿勢は、事業経営にも役立つ」と、後進育成にも視野を広げています。

喫緊の課題の一つである、医療崩壊に対して、柴原さんの想い、そして行動に、感銘を受ける方がこれからも続出することでしょう。インタビュー、ぜひお聴きください。

※1地域包括ケアシステムとは
団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していきます。今後、認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築が重要です。人口が横ばいで75歳以上人口が急増する大都市部、75歳以上人口の増加は緩やかだが人口は減少する町村部等、高齢化の進展状況には大きな地域差が生じています。地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要です。(厚生労働省HPより)

地域包括ケアシステム
厚生労働省HPはこちらから





【書籍紹介】
医療難民を救う 「在宅型医療病床」
(発行:幻冬舎)



  • 治療・療養生活を探し求める「医療難民」を“病床のシェア"による「在宅型医療病床」が救う!
    2025年、国民の3.3人に1人が65歳以上、5.6人に1人が75歳以上という超高齢社会が到来。
    政府は、社会保障費を少しでも減らすべく、全国135万床の病床を2025年までに約20万床減らす方針を打ち出しています。
    しかし高齢者向け施設ではなかなか受けいれてもらえない医療依存度の高い高齢者「医療難民」が増える一方で、深刻な課題です。
    医師であり実業家でもある著者は、新たな発想“病床のシェア"による「在宅型医療病床」で、この「医療難民」の問題に立ち向かっています。
    本書では、超高齢社会に向け医療の新たな形をご紹介します。

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【スペシャルゲストプロフィール】
柴原 慶一(しばはら・けいいち)

医師・医学博士。名古屋生まれ。名古屋大学医学部卒。京都大学医学部大学院(分子生物学専攻)。研究テーマは遺伝情報の複製機構の解明。2010年に研究室を閉鎖。以降、事業家の道を歩む。地域医療再生をテーマに掲げ岩手県に移住。公的病床の福祉への再活用、東日本大震災復興支援、社会福祉法人設立、民間医療法人MA・再生などを経て、2012年株式会社アンビス設立。以降、在宅型医療病床(医心館)事業を展開している。